劇場の音楽
歌やせりふのある「オペラ」。ダンスとパントマイムで物語を演じる「バレエ」。それらが生まれたヨーロッパのオペラ・ハウスのなかには、この大きなサントリーホールよりも、さらに大きな劇場もたくさんあります。舞台装置をいくつも置いておける広い舞台。シャンデリアや彫刻でかざられた高い天井。そして、たくさんの人! 昔は、音楽はふつう、貴族やお金持ちなど限られた人の楽しみでした。けれどもその時代から、劇場には、ふつうの人々も入ってオペラやバレエを楽しむことができました。たとえばイタリアのヴェネツィアという町では、貴族も、ゴンドラの船頭も、町のだれもがオペラを楽しんでいたと言われます。それだけ大勢の人が見に来るのですから、音楽も人をひきつけ、楽しませるものでなくてはなりません。作曲家たちは腕をふるって、はなやかな音楽を書きます。歌手たちも、踊り手たちも、自分をより美しく見せよう、聴かせようとします。それらの舞台全体を支えているのが、オーケストラなのです。
劇場のなかでは、オーケストラは、舞台に半分もぐった「オーケストラピット」という所に入ります。まさに「縁の下の力持ち」。姿は見えませんが、オーケストラの役割は重要です。オペラのなかでは、言葉では言われない登場人物の気持ちを表わしたり、舞台の上のだれも気づいていない秘密を、観客にそっと教えてくれたりします。またバレエでは、音楽は踊り手の「言葉」となって、物語の筋や、登場人物の心を語ります。ですから、きょうのように音楽だけを聴いていても、私たちはまるでオペラやバレエを本当に見ているかのように、登場人物の気持ちをしっかりと感じることができるのです。
いまは、ビデオやDVDなどで、いろいろなオペラやバレエを見ることができます。舞台装置や、衣装を見るのも楽しいですし、歌手や踊り手たちの演技もなかなかです。機会があれば、そうしたなかからお気に入りの音楽や場面を見つけてみてください。