弦楽器のいろいろ
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスは、「弦楽器」に属します。いずれもマツやカエデなどの木材でつくられた胴体に、4本から5本の弦が張られています。弦を弓でこすって振動させ、この振動が木製の胴体全体に「共鳴」することで、美しい音が大きく響きわたります。弓には、馬のしっぽの毛が張ってあるんですよ。オーケストラのなかでは、小さい順に、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという4種類の弦楽器が演奏され、大きい楽器ほど低い音が出ます。
ヴァイオリン
華やかな音色でメロディーを奏でることの多いオーケストラのリーダー的存在。甘くロマンティックな音色から、激しく荒々しい音色まで自由自在に奏でることができます。演奏する人数もオーケストラのなかでは一番たくさんいます。弦楽器は、オーケストラでは複数の人数で演奏されます。大勢のメンバーが同じメロディーを演奏することによって音色や響きにもわずかな差が生まれ、それにより厚みのある美しい旋律が生まれるのです。ヴァイオリンは、主旋律の多い第1ヴァイオリン群と、それに呼応した別の旋律を奏でることが多い第2ヴァイオリン群に分かれて演奏しています。
ヴィオラ
ヴァイオリンよりひとまわり大きく、やや低めで深く渋みのある音色を出す楽器です。オーケストラの演奏では、ヴァイオリンやチェロほどメロディーを受け持つ機会は多くありません。でも、短い音をきざんで音楽全体のテンポを作ったり、音楽に表情をつけたり、中音域でハーモニーを作ったりする大切なパートです。深みのある温かい音色をもっています。バッハやハイドン、ブラームス、ベートーヴェン、ドヴォルザークなどは好んでヴィオラを演奏したといわれています。viola(ヴィオラ)とは、もともとイタリア語で擦弦楽器(弓で弦をこすって音を出す楽器)の総称からうまれた言葉で、violino(ヴァイオリン)は「小さいヴィオラ」、 violoncello(チェロ)は「大きいヴィオラ」を意味して名づけられました。
チェロ
宮澤賢治の名作『セロ弾きのゴーシュ』でもおなじみの楽器です。音域は人間の声にいちばん近いと言われています。包みこむように豊かな音色や幅広い音域で人気があり、オーケストラでも旋律を弾いたり、中音域を支えたり、伴奏を受け持ったり、とさまざまな場面で活躍する楽器です。胴体の長さはヴァイオリンの約2倍、厚さは約3倍もあります。楽器の下からはエンドピンと呼ばれる棒が出ていて、チェロ奏者はエンドピンを床に立て、楽器を両足に挟み、椅子に座って演奏します。
コントラバス
全長が約2メートルもあるオーケストラ最大の楽器。「コントラ」とは音楽用語で「特別に低い」という意味があります。他の弦楽器が5度間隔で行う4本の弦のチューニングを、コントラバスは4度間隔で行うほか、弦が5本のものもあります。並外れた大きさのほかにもユニークな点がいくつもある楽器です。オーケストラの中で最も低い音を出し、足もとから響きわたるようなどっしりとした重低音で、アンサンブルを土台から支えています。